建築コラム2024.12.19
自動車駐停車のやっかいもの 電柱は移設できる!
土地をお探しの時に、現地をみると、電柱位置場所が気になることがありませんか?
「この電柱が立っていなかったら車の出し入れが楽なのに…。」とガッカリすることもあるかと思います。実は、電柱は所有者に申し出をすれば移設できることがあるんです!今回は電柱の移設の具体例をご紹介します。
電柱に困るなら移設の検討も
土地を見学したときに電柱がちょうど車の出入りが邪魔になる位置にあると、その土地を購入しようかどうか考えてしまいますよね。車の出し入れ位置は家の配置にも影響するので、設計の自由度が下がってしまいます。実は電柱は移動できる場合があるんです。電柱の持ち主に移設の相談(協議)をすることができます。もちろん、希望の場所に電柱を移動してもらうという意味で工事費は発生しますが、もし電柱の位置にお悩みなら電柱の所有者に相談してみるのもいいでしょう。
電柱の支線も撤去できる場合があります
電柱ではなく、電柱からから斜めにでている支線が土地の出入り口付近にある場合があります。上の写真ですと、斜めにでているワイヤーで黄色のカバーがされているものが支線です。この土地の場合接道している間口のちょうど中央に支線があるため、駐車場の場所の検討が難しくなります。こういった支線も撤去できる場合がありますので、電柱の持ち主に相談してみましょう。
こんな事例もあります
オームラ設計で経験した電柱移設を例に移設可能例をご紹介します。
電柱の位置をずらす
宅地と道路が接する部分(間口)が限られており、車2台を駐停車しやすくするため反対の境界付近へ移設してもらいました。電柱所有事業者さんが協議を行い、近隣の方のご協力もあり移設が可能となりました。工事費は有料です。
移設工事の流れ
オームラ設計が分譲地を整備するにあたり、道路を通行しやすくするため中部電力パワーグリットさん所有の電柱を移設協議して実施した工事を例にて、移設工事の流れをご紹介します。
1. 電柱所有者と協議開始
電柱を動かすことが可能かどうか所有者に連絡します。動かしたい、と伝えるだけではなく、電柱を移動させたい具体的な位置も決まっている必要があります。動かせるかどうかは、電柱の持ち主が電柱の共同利用者や電柱の立っている土地所有者など関係各所に確認し、移設可能かが決定されます。回答まで時間がかかる場合があるので、余裕をもって確認しましょう。
電柱の所有者は地域の電力会社であることが多いですが、通信会社が所有する「電信柱」の場合もあります。電柱を見上げてみましょう。地上3メートルほどのところに番号が書かれたプレートがあります。
クリーム色の札に、うっすらですが中部電力のマークが見えますので、中部電力パワーグリットさん所有の電柱ということになります。その上にはNTTのマークがあり、NTTさんと共同利用している電柱ということが分かります。移転の相談は電柱所有者に相談しましょう。
2. 工事費の提示
移設できる場合、工事費は原則として移設を申し出た土地の所有者の方が工事費を負担します。通常の電柱移設ですと、15~50万前後となるケースが多いようです。ただし、条件によっては工事費が無料になったり、逆に条件が厳しい場合は工事費が数百万と高くなる場合もあります。工事費が原因で移設を断念する場合もあるので注意が必要です。
3. 工事実施
工事業者さんが新しい電柱を持ってきて移設を希望する場所に立てた後、古い電柱から電線を架け変えます。工事中はその電柱から電気を引き込んでいるお宅の電気が止まる場合もあれば、止まらない場合もあるようです。(今回は止めることなく工事ができました。)古い電柱は抜いて回収され、その場からなくなり、工事完了です。
このケースの場合、協議開始から移設まで数カ月かかりました。調整で時間がかかることがあることがあるので、協議開始を早く行うことが大事です。
電柱移設を条件に土地を購入する場合
一般のお客様が土地にある電柱をみて、「電柱は移設ができるから」と、土地を購入し土地の所有者になったあと自分で協議するつもりで土地購入を決めるのは危険かもしれません。先の例で挙げた通り、移設は必ずできるわけではないためです。
移設できないリスクを避けるために、電柱の移設を売買の条件にして、不動産屋さんに電柱の移設協議を行っていただくようお願いしてみてはどうでしょうか? あきらかに土地に対して電柱の位置が悪い場合は、移設すれば土地の魅力があがりますので対応していただける不動産屋さんもいらっしゃるはずです。ただ、不動産屋さんから協議の協力が得られても、移設工事費が高い場合や電柱移設にかかわる方々の理解が得られない場合は移設できないことも想定し、土地購入の際に念のため「電柱の移設ができなかった場合は土地の購入をしない」という書面を取り交わして売買契約を結ぶと安心です。また、電柱移設の協議前には電柱の移設位置が確定している必要があります。必ずプロに設計を依頼して、家や駐車場の配置プランを確実なものにしておいてくださいね。
明らかに電柱が車の駐停車を阻害している場合は土地の魅力を下げてしまいます。電柱を移設させる協議には長い時間がかかる場合がありますが、長く住む家ですので、どうしても電柱の位置が気になる場合は早めに確認しましょう。