変形地に建てた実例
今回は道路に挟まれていることが課題になります。
第一種低層住居専用地域では、隣地境界や道路境界から1m後退した部分に建築できるのですが、この土地は風致地区に指定されているため、道路境界線側は更に1m長く、2m空ける必要があるからです。
風致地区は名古屋市では東部に多く指定されており、緑が多くてゆったり住宅が立ち並ぶため住むにはとてもいいのですが、建築や緑化の制約を受けます。今回の後退距離加算も、風致地区は道路からの景観を大事にするため付近の緑化を義務付けているためです。車が出入りする道路面は車2台分の駐車スペースを設けるため空ける予定でしたが、その逆側の道路面も後退距離が増えてしまい、建築に使える面積が小さくなってしまいました。
薄いオレンジ色が今回の敷地です。形に着目すると、一部斜めになった変型地であることが分かります。
ここに長方形で構成された建物(緑色)を配置すると、建物周辺にデッドスペースができてしまいます。更に部屋のプランニングでも、必要な要件がなかなか思うように入りきることができません。広さがコンパクトで変型地となると、同じ大きさの整形地よりプランニングの自由度が落ちてしまいます。
ただし、斜めの壁は違和感を感じる場合もあります。そうしたことがないよう、斜めを感じそうな場所は、人が移動する玄関や階段を配置したり、壁面に大きな収納を設置して斜めにそって移動することがないようプランニングしました。
階段はオープンな木製階段で、上階から光が落ちてくるのが感じられ、2階の踊り場にある大きな窓から見える景色がアクセントとなった場所です。階段の上り下りで視界に変化があるため、階段降り口付近でやや斜めにせまってくる壁面に気が付きにくく、違和感を感じません。階段室を閉鎖的ではない場所にしたのが功を奏した結果となりました。
キッチンの方からリビングの窓辺に向かって少ししぼんだ形になっていますすが、窓からの明るい光でそれほど気になりません。
リビングの大きな窓は、周囲に建物が近接していないため常に見晴らしがいいことに加え、リビングという広い空間、天井高の変化もあるため、テレビボード側の壁が斜めになっていることに気が付きにくいのかもしれません。敷地の有効活用のため、思い切って斜めにして生まれた好例でした。